概要
「ドラゴンクエストV」小説の作者 久美沙織(くみさおり)氏が 主人公の名前「リュカ」を2019年8月2日公開の あの映画 で無断使用されたとしてスクウェア・エニックスや東宝などに220万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求め訴訟
名前は著作権法が定めるところの著作物ではない、というスクエニ側の主張が認められ、裁判は棄却されました
棄却:審議しません、ということ
訴えを受けた裁判所が申立て理由がないとして、または法に合わないとして、無効の言渡しをすること
法に合わないという表現がいかにも裁判所ちっく
法的な解釈
東京地裁 柴田義明裁判長いわく「『人物の名称』は著作物ではない」とのこと
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
著作権法第2条より抜粋
ということで、確かに「人物の名称」は、
思想又は感情を創作的に表現している かもしれませんが
文芸でも、学術でも、美術でも、音楽でもありません。
そして、もし、人物の「名前」に著作権が認められたら、原則同じ名前を名乗れなくなってしまいます。
改名手続きや出生届の手続きが煩雑になり、戸籍管理業務がパンクしてしまいます。
関連する法整備も大変です。
全然関係ないですが、ロマンシング サ・ガ リ・ユニバースというソシャゲのヒロインでアーニャというキャラクターが登場したころ、ちょうどスパイファミリーのアニメが流行っていて、ネット上で"被り"が発生したことがありました。
それを踏まえてか、第三部のヒロインの名前は鬼八(キハチ)という、突飛すぎる名前になりました。おにやと呼んでいたことは内緒。
訴訟の意図/考察できる背景
どうやら、スクエニの広報部ともめたから、らしいです。
パンフレット等で、主人公の名前の由来はドラクエ5の小説に<由来>していることを明示してほしい、という訴訟内容に沿う主張をしていたそうです。
しかし、スクエニの窓口は法的根拠がないとして、これを無視し、訴訟に至りました。
↓↓~~ここからは筆者の想像です~~↓↓
もともと、2010年代前半あたりから水面下でドラクエの映画化の企画があって、そのとき、評判のよかった5の小説を下地にする<案>があったのではないか? と予想します。
ゲームをプレイし小説を読むとわかりますが、原作愛あふれるノベライズです。
少なくとも、スクエニ主導で映画化企画が行われていたなら、久美沙織氏にも話が行っていた、当初は深く関わっていたと考えられます。
しかし、その小説→映画の案はカット!
理由はいろいろ想像できます。
まず、小説が<原作>となると、原作者に支払うギャランティが発生し、スクエニの取り分が削られるから、というのが主な理由な気がします。
ほかにも、映画制作者サイドからの要望――原作者が口を出す環境を映画"村"は良く思っていません。
部外者の一言で、やり直しを迫られていい気がするでしょうか。 たとえ品質の向上が図られても。
映画化の条件に"小説を下地にする案"ではなく"脚本は映画製作側・監督で用意する"ことをスクエニに提示した可能性もあります。
→この経緯の真偽はどうあれ、実際に脚本は監督が書いています。
久美沙織氏は、当初、シナリオ案や設定資料の用意などをしていたかもしれません。
すると、ちゃぶ台返しを食らったことになります。
スクエニとの関係は悪くなり、さらに、窓口担当者から「小説とは一切関係のない映画になる予定です」とまで伝えたのかもしれません。
ところが、山崎貴氏の脚本の主人公の名前は「リュカ」。
しかも、ところどころに……影響を受けたような……
ゲームは未プレイだそうですが、小説は読まれたのかもしれません。 あるいは、スクエニが用意した設定資料集の名前にリュカを使っていたのではないか、<小説下地案>の"残り香"があったのではないかと想像することもできます。
キックを受けたのに、発表された映画の"内容"や"製作秘話"を知って、スクエニや東宝に裏切られた、利用されたという思いを抱いたとしても当然かもしれません。
もっとも、それを押し切ったスクエニは「人物の名称」は著作物ではなく、表現の範囲も原作ゲームの範疇のものだと確信していたので、ブッチしたのでしょう。 訴訟が棄却された事実から、交渉においてはスクエニ担当者が一枚も二枚も上手だったというわけです。 映画においてはセンスの欠片もありませんでしたが……
↑↑~~筆者の想像終わり~~↑↑
著作権法に本当に違反している――勝訴の見込みがある――こととは別に、作家の成果物や善意を搾取する行為に対して怒りを表しているのであって、その象徴的なもので、かつ、具体性のあるものが主人公の名前「リュカ」だった。 なので、その部分で訴えるしかない。 しかし、人物の名前は著作物ではない、という判例がでてしまった、というのがこの訴訟事案の総評として記すことができます。
蛇足
1と2はノベライズ※の実験的な作品だったと記憶しています。 あとがきに、期限が迫っていて筆の早い人で、かつ、ゲーム・アニメなどのサブカル分野に親しみのある人ということで自分が選ばれた、実質、二週間くらいしか時間がなかった、ということを書かれていたように記憶しています。 かなりあいまいです。 違うかもしれません。 借りた本で、手元にないため確認しようがないのです。
リアル中二の筆者が、
「これくらいなら、オレでも書ける」と思った程度の品質です。
汚名返上、名誉挽回のため、3作目はそれなりの時間をかけて、4作目以降は名のあるライトノベル作家に依頼しようとなった経緯を感じられます。
5は名作と名高く、涙が止まらなくなる、そうです。
もっとも、あの映画があって、小説が再びスポットライトを浴びることになりました。
もし、5の小説を下地に映画を作っていたなら、と今でも思います。